• Home 母の思い出の着物が買い叩かれたかもしれません…

母の思い出の着物が買い叩かれたかもしれません…

20150902201020母から着物を売るよう頼まれました。母は若い頃から日本舞踊を嗜んできた女性です。お稽古のときのみならず、日常的にも和装するような人でしたから、着物のコレクションはなかなかのものです。しかし、足腰を悪くして舞踏から遠ざかって以来、多くの着物がタンスの奥深くに眠ることとなっていました。「誰か他の人に着てもらったほうがいいわ」という母の言葉に一抹の名残惜しさを感じとりながらも、私は母の頼みを受けることにしました。そして、近所の呉服屋に母の着物を持込み、買い取ってもらったのです。

「あら、買い叩かれちゃったわね」。着物を売ったお金を届けに行くと、母の口からはそのような言葉が漏れました。それは私を責めるような口調では決してなく、独り言を呟くような静かな口調です。しかし、私の心はズキリと痛みました。その様子を察したのか、母は笑いながら、「中古なんだから思い通りの値段はつかないものよ、ありがとうね」と言ってくれます。けれど、私の後悔は晴れません。母の思い出がいっぱい詰まった着物を、私はろくな下調べもせずに、ただ近いという理由だけで近所の店に売ってしまったのです。

後日になって知りましたが、着物買取業者のなかには「無料査定」を行ってくれる店も多いようです。私もそのサービスを利用すべきでした。複数の着物買取店に無料査定をお願いして、一番高く値をつけてくれたお店に母の着物を売るべきだったのです。近所の呉服屋が買い叩いたのかどうかは今となっては分かりません。しかし、こんな後悔をせずに済むよう、もっとしっかりしたプロセスを踏むべきだった。今でもそのように心が痛むことがあります。