• Home おばあちゃんの着物

おばあちゃんの着物

私は祖母が大好きでした。幼い頃から私はおばあちゃん子で、どこに行くのも何をするのも一緒でした。やがてそんなおばあちゃんが、身体の不調を訴えて入院する事になりました。

その後、やはり体調が思わしくなく、入退院を繰り返す様になってしまったのです。久しぶりに自宅に返ってきた時の事でした。おばあちゃんが押し入れの中を整理していたのです。この時既に、自分が長くない事を悟っていたのでしょう。身辺整理をしていたのです。

おばあちゃんは昔から着物を沢山持っていました。その中の着物を、私に譲ってくれると言うのです。私は何だか、この着物を受け取ってしまったら、本当におばあちゃんとお別れする日が来そうで断りました。けれど、おばあちゃんの意思は堅く、私に持っていて欲しいと言うのです。私が大切にすると誓い、着物を譲り受けてから暫く経って、おばあちゃんはなくなりました。それから数年後、私は大好きな彼と同性婚していました。

彼は金遣いが荒い人でした。仕事も長続きせず、気が付くと私のお財布からお金を抜き取る事もあったのです。彼と暮らす時、私はおばあちゃんの着物を持ってきました。まだ一度も袖を通した事のない着物でした。やがて彼がお金に困り、私の私物を売っていた事が発覚しました。その中に、着物もあったのです。

大切な着物を売り飛ばされてしまい、私は彼と別れる事にしました。幸い、実家にも着物を一部残してきたので少しは救われましたが、今でも許せません。あの着物はおばあちゃんが一番大切にしていたのです。きちんと着付けをした姿を、おばあちゃんに見て貰いたかったです。